blog1138

松本敦です。いちおう最高位戦で麻雀してます。ブログは頑張って続ける。内容はテキトー

Ringworldが手に入らない

新宿三丁目伊勢丹の裏あたりに珈琲貴族という喫茶店があって、たまに仕事をしにゆくんだけど、そこの本棚を眺めていたら古いSFマガジンが積まれていて、「あっ、、、。」という感じ。

僕のSFの原体験はいつだったか、父の友人が家に来ていたときに彼らが観ていたスタートレックだったような気もするし、小学校の図書館でたまたま手にとってみた「怪奇植物トリフィドの侵略」だった気もする。少なくとも、ゴジラや、スターウォーズや、筒井康隆でなかったことは確か

やがて、図書館を駆けずり回ってSF小説を読み漁るようになってゆくわけだけれども、早川文庫のSF(いわゆる「青背」)は父の本棚にほぼ全て揃っていたにも関わらず(恐ろしいことにそれは未だに更新され続けている)なんとなく難しそうで、恐れ多い気がして手が伸びなかった

しかしやがて、小学生が安易に手に入れられる範囲にある本は読み尽くしてしまい、半ば「しかたないから手をつけるか」みたいな気持ちで書斎の本棚を物色していたときに、たまたま手に取った2冊が、「2001年宇宙の旅」と「リングワールド」だった。2001は著名な作品なので、選択的に選んだんだけれども、リングワールドは単純に本の厚さとか、背表紙の擦り切れ具合とか、本当にテキトーに手にとった、と思う

で、2001は途中で断念した。正直な話、僕はいまだにあの小説のどこが面白いのかおそらく理解できていない

リングワールドは一気読みした。知識とか理解力、みたいなものを読みながら鍛えられている感があり、あーこれが大人のSFの世界なのかと、これは心して臨まなくてはいけないぞと、そんな読後感だったことはよく覚えている

あらすじは単純で(70年台の小説でいまさらネタバレもないとは思うけど掻い摘んで紹介すると)、宇宙人チーム(地球出身者も含む)がリングワールドという土地に冒険に行き、死にそうになり、なんとか帰ってくるというそれだけの話だ。コナン・ドイルの「失われた世界」と大差ないんだけど、リングワールドはとにかく設定が尖りまくっている。

チームメンバーはご多分にもれず、全員なんらかの特殊能力者だ。地球人は著名な冒険家であり、経験を買われてチームリーダーになる。(リーグ・オブ・レジェンドの、ショーン・コネリーで大体合ってる)クリンゴン的な暴力担当もいるし、臆病な学者枠兼・スポンサーもいる。で、地球人の女性がそこにスカウトされるんだけれども、その能力が”めっちゃ運がいい”。

地球の描写はほとんどないんだけど、いわゆるディストピア的に描かれていて、一部の地位のある人しか出産が許されていない。ただ例外的に、毎年何人か抽選で出産権を得られるようになっていて、彼女は7世代までの祖先が全員、その抽選に当選して産まれた、いわば「運の血筋のサラブレッド」。で、彼女一人しかいない。学者はお守りとして彼女を選んだのだ。彼女は最終的に凄いことになってしまうんだけど、いろんな伏線を「運」を軸に回収するというのが、とにかく新鮮で面白かった。(もちろん新世界の設定や描写も引き込まれたが)




で、久々に読みたくなったが、ない。もう紙の本は面倒なのでKindleiBookがいいんだけど、どちらでも電子化されていない。(原書はある)おそらく、紙の本しかない。電子化有無に関わらず、国内のハードSFの流通量はもうほとんど残っていない。ストアでSFっていうジャンル観てもよくわかんないラノベとかまあ否定はせんけど。

電子化のコストがどれくらいなのかわからないが、Digital Archiveする対象だとは少なくとも認知されていないんだと思う。NTTデータバチカンの蔵書をすべてArchiveする仕事を受注しているけど、早川文庫さんは原稿がなくなる前に僕にその仕事をくれないかしら。タダでもいいので。